楽しみにしていた旅行に予期せぬ月経が重なってしまった、そんな経験がある人もいらっしゃると思います。月経のタイミングはコントロールが難しいもの。予定通りにきていたら問題ないはずが、想定外に早くきてしまって旅行とかぶってしまった…なんていう場合もあるかもしれません。今回は女医の筆者が、旅行前や旅行中に月経が訪れた場合の対策や注意点について解説します。また、事前に月経を移動させる方法についても解説していきますね。
旅行中の月経による体調不良
月経中の症状は人によって様々で、同じ個人でも周期によって症状に変化があることも少なくありません。一般的な症状としては、腹痛や頭痛、疲労感などがあるでしょう。人によってはメンタルが落ち込んだり不安定になったりする方もいます。こういった症状が出てしまうと、せっかくの旅行も十分楽しめなくなってしまいますね。
対策1: 鎮痛剤の準備
腹痛や腰痛、頭痛といった痛みの症状が現れやすい人は、市販の鎮痛剤(例:イブプロフェン、ロキソプロフェン、アセトアミノフェン)を持参し、すぐに使用できるようにしておきましょう。突然月経になってしまったときのために、おまもりとして持っておくと安心ですね。
対策2:体調を考慮したスケジュール調整
移動や観光のスケジュールは余裕を持って組むことで、体調に応じた休息を取りやすくしましょう。特に月経初日には無理をせず、ゆったりとしたプランを立てておくと安心ですね。
衛生用品の持参について
海外など、旅行先によっては普段使用している衛生用品が手に入らない場合があります。同じような生理用品が販売されていても、日本のものとは素材が違ったりと、慣れない生理用品を使用することで肌トラブルの原因になることもあります。そのため、使い慣れた生理用品を持参しておくと安心です。
対策1:必要な日数分の衛生用品を持参
タンポンやナプキン、月経カップなど、自分に合った製品を持参しましょう。
対策2:替えの下着や服装を準備する
衛生用品が十分でも、漏れが心配な場合は替えの下着や軽装の服を持ち歩くと安心です。ポーチにまとめておくと、緊急時にもすぐに取り出せるでしょう。
水分補給と食事の工夫
月経中は水分が失われやすく、脱水症状を引き起こしやすい状態です。特に暑い地域への旅行では注意が必要です。
対策1:こまめな水分補給
飲料水を常に携帯し、こまめに水分を補給しましょう。カフェインの入った飲み物は利尿作用があるため控えめにし、ミネラルウォーターやスポーツドリンクがおすすめです。
対策2:栄養バランスの取れた食事
栄養バランスの良い食事を心がけることで、体調管理がしやすくなります。特に鉄分やビタミンB群を含む食品を積極的に摂取しましょう。外食が中心になる場合は、サラダやフルーツも意識して選びたいですね。
月経移動の選択肢:低用量ピルの使用
予期せぬ月経の場合はここまで紹介したような対策をとっておくのが安心ですが、月経がかぶりそうだとあらかじめわかっている場合は、低用量ピルなどを使った月経移動も一つの選択肢です。
注意点1:事前の医師相談
低用量ピルを使用する場合は、必ず事前に医師に相談し、自分に合った種類や使用方法を確認します。特に初めて使用する場合、副作用についても理解しておくことが重要です。直前すぎると思うようにずらすことができない場合もありますので、余裕を持って受診しておくと安心ですね。
注意点2:服用のタイミング
早めにプランを立てておくと、月経を早める、もしくは遅らせるという選択をすることができます。早める場合のメリットは、旅行中にピルを持参しなくてよいこと、副作用を気にしなくてよいことが挙げられます。遅らせるメリットとしては、比較的直前の受診でもコントロールできることです。具体的なタイミングについては、医師の指示に従いましょう。
注意点3:副作用と対処法
低用量ピルへの身体の反応には個人差がありますが、副作用として頭痛や吐き気を感じることがあります。これらの症状が強く現れた場合のために、鎮痛薬や吐き気止めを用意しておくのがおすすめです。
楽しい旅行のために
旅行中の月経は避けられないこともありますが、事前の準備や適切な対策を行うことで、快適に過ごすことも可能です。衛生用品の準備や体調管理、水分補給など、基本的なことをしっかりと押さえておきましょう。
また、事前に月経の時期が予測できる場合は、月経移動を検討することも一つの手段です。旅行先での月経にまつわるトラブルを未然に防ぎ、素敵な旅の思い出を作れることを願っております。
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筆者情報
ママ女医ちえこ(産婦人科医)
産婦人科専門医であり、プライベートでは4人の子どもを育てる母。2020年からはYouTuberとしても活躍し、性教育としての医学情報や健康情報を中心に、女性が自分の体について考えるきっかけになる専門性を生かした情報を発信。現在のチャンネル登録者数は17万人を超える。著書に『子宮にいいこと大全 産婦人科医が教える、オトナ女子のセルフケア』(KADOKAWA)、『医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))がある。
YouTube:https://www.youtube.com/c/mama女医ちえこ
X:@mamajoy_chieko
産婦人科専門医/ママ女医ちえこ