月経痛で体調不良でも、仕事を休めない…。そんな我慢をして、日々仕事に臨んでいる人も多いのでは? でも、我慢のしすぎは禁物。とはいえ、職場で言いにくいこともありますよね。今回は、上司にうまく伝えるコツを公認心理師や産業カウンセラーなどの資格を持つ専門家にお話しを伺いました。
先輩社会人の約8割は「不調を我慢しなくていい」と思っている!
ツムラが2024年1月に、新社会人1,000人と社会人歴3~5年目の先輩社会人1,000人を対象におこなった「働くことと不調に関する意識調査」によると、新社会人の6割は「社会人として多少の不調は我慢すべき」と考えていることが判明。確かに就職したての時期は特に頑張りたいですよね。その気持ち、わかります。
一方、先輩社会人の約8割は「社会人だからといって不調を我慢しなくていい」と考えていることがわかりました。
新社会人の頃に“隠れ我慢”の経験が一度でもある先輩社会人のうち、「心身の不調を我慢しないでほしいと伝えたい」と答えたのは81.1%。新社会人が不調のときは彼らが我慢する以外の考え方や行動を取れるようサポートしたいかと聞くと、89.0%が「サポートしたい」と答えました。
つまり、先輩は心強い味方になってくれる可能性があるということ。
コメントを寄せていた、公認心理師や産業カウンセラーなどの資格を持つメンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんは、「不調を感じたら“こまめに相談すること”も大切な選択肢の一つ。“隠れ我慢”をしなくていい職場環境をみんなでつくっていきましょう」と呼びかけています。
けれど月経痛やPMSなどで体調が悪いとき、メンタルが不安定なときは、上司はもちろん、相手が先輩であっても言い出しにくいものですよね。そこで今回は、大美賀さんに職場での不調の伝え方を教えていただきました。
月経痛やPMSの不調、どう伝える?
まず知っておきたいのが、体調が悪いときの基本的な対処法です。大美賀さんは次のように職場で相談することを勧めています。
大美賀さん 発熱やひどい咳、下痢、腹痛、めまい、カラダがフラフラするなど、その日1日働き続けることができなさそうな体調だと感じたときには、無理せずに休むことが必要です。通勤するのもしんどくてつらい、仕事にまったく集中できなさそう、まわりにも迷惑をかけてしまいそうと思ったら、職場や業種にもよるかもしれませんが、上司や先輩などに相談して、休む、早退するなどしましょう。
ーー月経痛やPMSの不調で仕事に支障が出る場合に、上司や先輩にはなかなか「休みたい」「早退したい」「すこしだけ休憩していいか」などと伝えにくいものです。そんなときどうすればよいのでしょうか。相手別に、伝え方を教えていただきました。
「直属の上司」への伝え方
大美賀さん 伝えにくいかもしれませんが、上司には体調不良とその原因をはっきりと伝えましょう。月経による不調で休むことは「生理休暇」として労働基準法でも定められている措置です。PMSは厳密には生理休暇には含まれませんが、生理休暇として認めている企業もあるため、相談してみましょう。
月経痛やPMSで休むのは恥ずかしいことではありません。できるだけはっきり伝えると共に、周りの人には知られたくないという気持ちがあるなら、その旨も伝えておくとよいでしょう。
「先輩社員」への伝え方
大美賀さん 女性の先輩なら伝えやすいですが、男性の先輩には伝えにくいかもしれません。上司は部署内の労務管理の責任者であるため、月経痛やPMSなどの不調の理由をはっきり伝えなければなりませんが、一緒に働く先輩たちにまで包み隠さず話す必要はありません。
先輩たちには「貧血」や「腹痛」、「体調不良」などのように、月経痛やPMSから発生する症状を伝えておくと良いと思います。もし、休むことについて疑問を感じている様子が感じられた場合には、「上司には事情を説明して、了解いただいています」と一言伝えておくとよいでしょう。
それでも「何かの病気?」などとしつこく聞かれ、言いたくない場合には、「すみません。個人の事情ですので」などとやんわり伝えて、詮索(せんさく)を防御するのも一案です。
職場の相談窓口
大美賀さん 職場の保健スタッフや人事部の女性スタッフなどは、月経痛やPMSをはじめ、女性のデリケートな症状を理解し、相談に乗ってくれる頼もしい存在です。ぜひ日頃から、相談しながら信頼関係を築いておくとよいでしょう。
休むほどではない不調であれば、保健室や休憩室で少し横にならせてもらうだけで、症状が軽くなることもありますよ。男性上司に直接休暇を申請しにくいときには、人事部経由で上司に伝えてもらうこともできるでしょう。
メンタルが不安定なときの対処法
ーー最近は従業員のメンタルヘルスに関して敏感になっている職場も増えてきました。では、メンタルが不安定なときは、どう対処すべきでしょうか。
大美賀さん メンタルが不安定なときには、その原因を考えてみましょう。仕事のストレス、人間関係、恋愛、お金の心配、将来への不安など、あなたの心を悩ませる中核となる原因があるはずです。その原因について、各分野の専門家に相談して解決策を探ってみるとよいです。
あるいは、ただ愚痴や不満を聞いてもらいたいだけなら、友だちや家族に打ち明けるのもよいでしょう。誰かに相談したり、休暇を取ってゆっくり休んだりしてもまったく回復しない場合には、心療内科や産業医の先生などの専門医に相談するのもおすすめです。
ーー体調やメンタルが優れないときは、特に正しい判断がしにくいときです。一人で悩まず、また我慢しすぎず、今回のアドバイスをヒントにケースバイケースで対処したいですね。
Information
<教えてくれた人>
大美賀 直子(おおみか・なおこ)さん
メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラーの資格を持ち、カウンセラー、作家、セミナー講師として活動。現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法を解説。
<筆者情報>
椎原茜
ライター。記事を通して、読者の方々に役立つ情報を知ってもらい、ハッピーかつ快適な生活を送っていただきたいという思いで執筆中。
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文・椎原茜