現代社会では、忙しい日々の中で十分な睡眠を確保することが難しいことが多々あります。寝不足が続くと、体調が悪くなったり精神的に不安定になりやすいということはよく知られていますが、ついつい目の前にあるタスクを優先してしまうという人も少なくないでしょう。そんな無理のしすぎで寝不足になってしまった日の対処法を誤ると、さらに状況が悪化することがあります。今回は、寝不足時に避けるべき行動と、体を楽にするために有効な方法について解説します。
寝不足時に避けるべきNG行動
カフェインの過剰摂取
寝不足時になっている脳を覚醒させようと、カフェインを摂りすぎるのは逆効果になることがあります。カフェインは、一時的に眠気を和らげ、集中力を高める効果がありますが、過剰に摂取すると体が過度に興奮し、逆に疲労感を増す場合もあります。また、カフェインの効果が切れると急激な眠気やだるさが襲ってくるため、結局はパフォーマンスが低下してしまいます。
例えば、寝不足な日にコーヒーを何杯も飲むと、夕方には極度の疲労感に見舞われることがありませんか? さらに、夜の睡眠にも悪影響を及ぼし、翌日の寝不足がさらに悪化する可能性があります。
大量の糖分摂取
寝不足時には甘いものをたくさん食べたくなりますよね。これは、ストレスホルモンのコルチゾール(※1)が食欲を過剰にさせるために起こると考えられます。ですが、糖分を過剰に摂取すると、血糖値が急上昇し、その後急降下するため、体調を崩しやすくなるのです。
実際に、朝食にドーナツや菓子パンを大量に食べたあと、午前中は元気が出るかもしれませんが、昼過ぎには強い眠気や疲労感が襲ってきたという経験をしたという人もいらっしゃると思います。
糖分は一時的にエネルギーを供給しますが、その後に血糖値が急激に下がることで、さらに疲労感や集中力の低下を招きます。また、糖分の過剰摂取は肥満や生活習慣病のリスクを高めることにもつながりますので注意が必要ですね。
昼寝のしすぎ
寝不足を補おうとして長時間昼寝をすると、夜の睡眠が妨げられ、逆に体内リズムが乱れる可能性があります。短時間の昼寝(20~30分程度)はリフレッシュ効果がありますが、長時間昼寝をすると、深い睡眠に入ってしまい、目覚めた後に逆にぼんやりとした状態になることがあります。
また、昼寝をしすぎると、夜に再び眠りにつくのが難しくなるため、さらに寝不足が悪化する可能性も。例えば、昼に2時間以上昼寝をしてしまうと、夜に寝つけず、翌日の朝も疲れが取れない状態が続くなどといったことが考えられます。
寝不足時に体を楽にするためにやるべきこと
短時間の昼寝
前述のとおり、20〜30分程度の短時間の昼寝は、寝不足時に効果的とされます。深い睡眠に入ってしまうほどの昼寝はよくありませんが、短い昼寝は、眠気を取り除き、午後の集中力を向上させる効果が期待できます。これにより、寝不足が原因で生じる生産性の低下を最小限に抑えることができるでしょう。
例えば、ランチ後に20分間の昼寝をすることで、午後の仕事や家事をより効率的に進めることができるかもしれませんね。
水分補給
十分な水分補給は、寝不足時の体調管理に欠かせません。水分不足は、集中力や体力の低下を引き起こす可能性があります。寝不足時は特に体がストレスを受けやすいため、水分を適切に摂ることで、体調を整える助けになります。
寝不足な日に意識して水を多めに飲むことで、頭がクリアになり、体が軽く感じることがあります。カフェインなどの無理に覚醒させる成分が入っていない飲料を選ぶといいでしょう。
軽い運動
寝不足時でも軽い運動を取り入れることで、気分がリフレッシュされ、眠気を和らげる効果があります。運動は、体に適度な刺激を与えることで、眠気や疲労感を軽減します。
また、血行が促進されることで、全身にエネルギーが行き渡り、集中力が向上するでしょう。例えば、昼休みに散歩をするだけでも、午後の仕事への集中力が高まることが期待できます。
おわりに
寝不足な日は、カフェインや糖分の過剰摂取、長時間の昼寝など、つい手を出してしまいがちな行動を控えることが重要です。代わりに、短時間の昼寝や水分補給、軽い運動などを取り入れることで、体と心のリフレッシュを図り、パフォーマンス維持に繋がります。適切な対策をとって、楽しく過ごせるように心がけましょう。
【参考】
※1 厚生労働省 ストレスってなに?
©ponta1414/Adobe ©hanack/Adobe Stock
筆者情報
ママ女医ちえこ(産婦人科医)
産婦人科専門医であり、プライベートでは4人の子どもを育てる母。2020年からはYouTuberとしても活躍し、性教育としての医学情報や健康情報を中心に、女性が自分の体について考えるきっかけになる専門性を生かした情報を発信。現在のチャンネル登録者数は17万人を超える。著書に『子宮にいいこと大全 産婦人科医が教える、オトナ女子のセルフケア』(KADOKAWA)、『医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))がある。
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産婦人科専門医/ママ女医ちえこ