病気になって病院を受診すると薬が処方され、それによって治す、あるいは症状を緩和させることが一般的です。薬を正しく服用することは、治療の成功に直結すると言えるでしょう。しかし、意外と知られていない注意点がたくさんあります。そこで今回は、薬の基本的なルールやよく聞かれる質問、勘違いされやすい点について解説します。
薬を飲むときのNG行為
NG1:用法用量を守らずに飲む
用法用量を守ることは基本中の基本です。医師や薬剤師から指示された通りの量を、指示された時間に服用することが大切です。勝手に量を増減させたりすると、効果が得られなかったり、副作用が強く出たりすることがあります。
NG2:薬を飲むタイミングを守らない
薬には服用するタイミングが指定されているものがあるのですが、これはなぜでしょうか? 例えば「食前」は食事の1時間~30分前の胃の中に食べ物が入っていないときです。これは食事や胃酸の影響を受けやすい薬を飲む場合や、血糖値に関わる薬、食後の吐き気を抑える薬などがあります。
「食後」は食事の後30分以内で、胃の中に食べ物が入っているときです。食べ物がある方が吸収がよくなる薬や、空腹時に飲むと胃が荒れてしまうような薬があります。
「食間」は食事と食事の間の時間です。食後であれば2時間後くらいが目安でしょう。これは空腹の状態で飲むと吸収がいい薬や、胃の粘膜を保護するための薬などがあります。
その他にも就寝前、ちょうど寝る30分前くらいに飲むといい薬もあります。これには睡眠薬や胃酸の分泌を抑える薬などがあります。また、解熱剤や鎮痛剤のように痛みがひどいときや症状がひどいときに飲む頓服の薬もあります。服用のタイミングを間違えると、薬の吸収が悪くなったり、効果が減少することがあるため注意が必要です。
NG3:水かぬるま湯以外で服用する
薬を飲むときには水かぬるま湯で服用しなければいけない、というのを聞いたことがある人も多いと思います。ジュースやお茶、アルコールなどで飲むといけないのでしょうか。実は水以外で飲んだ場合に、薬の効果が変わってしまうことがあります。
例えばグレープフルーツジュースはカルシウム拮抗薬をはじめとして多くの薬との相性が悪く、薬が効きすぎたり、効果が減弱するなどの影響が出てしまう場合があります。また、一部の風邪薬はアルコールで飲むと眠気が強く出すぎる場合があります。こういった、薬と相性が悪い飲みものもありますので、水かぬるま湯で飲むようにするといいですね。
NG4:薬なら安全だと信じ込む
医薬品は国の基準に基づいて薬効が承認・認可されたものだから、安全だと考えられがちです。確かに医薬品は国から承認されているものであり、病気からの回復などに役立つ一方で、どんな薬であっても副作用のリスクがあります。副作用が出るかどうかには体質による個人差が大きいです。また、特にアレルギーのある人、複数の薬を飲んでいる人、妊娠中や授乳中の人、高齢者などは副作用が起きやすいとされます。
内服後に悪心や皮疹など、副作用症状がないか注意しておくといいですね。気になる症状が出てきた場合は、すみやかに薬局や処方を受けた医師に相談するようにしましょう。
よくある質問Q&A
Q.薬を飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
A.これは非常によくある質問です。薬を飲み忘れた場合、次の服用時間が近ければ、忘れた分を飛ばして次の服用時間に通常の量を飲むようにするのが一般的です。次の服用時間が遠ければ、思い出したときにすぐに飲むといいでしょう。
ただし、血糖値の上昇を抑えるための薬など、決まったタイミングではない時間に服用することで、副作用のリスクを高めてしまうものもあります。対応が分からない場合は医師や薬剤師に相談して対応を仰ぎましょう。一般的には二回分を一度に飲むことは避ける方がいい薬が多いですが、具体的な対処法は薬によって異なるので、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
Q.サプリメントと薬の併用は問題ないですか?
A.健康維持のためにサプリメントを摂取している方もいらっしゃると思いますが、薬と併用する際には注意が必要です。一部のサプリメントは薬の効果を弱めたり、逆に強めたりすることがあるとされます。
通常は受診時の問診票などでサプリメントの服用の有無などを確認されると思いますので、正しく申告し、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
Q.古くなってしまった薬は使っても大丈夫ですか?
A.薬には有効期限があります。古い薬は効果が薄れていたり、場合によっては有害になっていることがあります。未開封であっても、有効期限が過ぎた薬は使用せず、正しく廃棄しましょう。
おわりに
薬を正しく服用するためには、用法用量を守り、適切なタイミングで飲むことが大切です。さらに、薬を飲む際には水かぬるま湯で飲むこと、飲み忘れた場合の対処法、サプリメントとの併用など、細かい注意点も覚えておくと安心です。薬の効果を最大限に引き出し、治療を成功させるために、これらのポイントを守って正しく服用しましょう。
また、万が一正しいタイミングで飲めなかったことで、身体に異変を感じた場合は、すぐに医師や薬剤師に相談してくださいね。
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筆者情報
ママ女医ちえこ(産婦人科医)
産婦人科専門医であり、プライベートでは4人の子どもを育てる母。2020年からはYouTuberとしても活躍し、性教育としての医学情報や健康情報を中心に、女性が自分の体について考えるきっかけになる専門性を生かした情報を発信。現在のチャンネル登録者数は17万人を超える。著書に『子宮にいいこと大全 産婦人科医が教える、オトナ女子のセルフケア』(KADOKAWA)、『医師がすすめる エビデンスベースの「体にいい」食習慣』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))がある。
YouTube:https://www.youtube.com/c/mama女医ちえこ
X:@mamajoy_chieko
産婦人科専門医/ママ女医ちえこ