暑さが厳しい今日この頃。ここまで暑いと熱中症が怖いですよね。予防策として、水分や塩分補給、カラダを冷やす対策などを行っている人も多いのではないでしょうか。でも知らずに熱中症リスクを高める行動をしてしまっていることも。今回は脱水症の専門医が「NG行動」を教えてくれます。
“なんちゃって熱中症対策”になっているかも!?
近年は猛暑が続いています。熱中症対策も定着化していますが、たくさんの情報が錯そうしているため、“なんちゃって熱中症対策”になっているかもしれません。また、知らないうちに、熱中症リスクを高める行動をしてしまっていることも。ぜひ正しい方法を知っておきたいものです。
今回は、脱水症に詳しく、著書『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』やメディアを通じて熱中症予防を啓発している医師である谷口英喜さんに、真夏にやりがちな熱中症リスクを高めるNG行動を5つ教えていただきました。
熱中症リスクを高めるNG行動5選
NG1. 水だけを大量に飲む
谷口さん 暑熱環境で汗をかいたら、失われた水や電解質、ビタミン類を補うことを意識することが重要です。電解質は特に塩に多く含まれるナトリウムを意識しましょう。
だからといって、水分を大量に摂取するのはいけません。水だけを大量に摂ると、いわゆる水中毒、つまり体内の塩分濃度が極端に下がってしまうことで引き起こされる低ナトリウム血症のリスクがあります。真水だけを1時間に1リットル以上飲むと危険です。水を補給する際には、必ず塩分が含まれた水分もしくは食事と合わせて摂取してください。
NG2. 塩分だけで水分を極端に摂取しない
谷口さん 塩分だけを取り、水分を極端に摂取しないのも避けてください。塩分を適度に摂取しながら水分補給をすることで、体内に水分が吸収されやすくなり、また残りやすくなります。塩分だけを摂取しても水分を抱え込めないため、水分の実質的な補給につながらないのです。必ず塩分と水分をセットで摂取しましょう。
NG3. 水分と塩分だけで他の栄養素の摂取を意識しない
谷口さん 水分と塩分だけ摂っていればよいというわけではありません。電解質はナトリウムのほか、カリウムやマグネシウムも重要です。またビタミンB1、ビタミンC、タウリンといった栄養素も役立ちます。
カリウムは、野菜や芋類、藻類に豊富であり、尿を出やすくすることで体温を下げます。ビタミンB1は、緑黄色野菜や豚肉に多く含まれ、熱中症の症状を緩和させます。
また、ビタミンCとタウリンは暑熱環境への順応を意味する「暑熱順化」を促し、熱中症に強いカラダづくりに役立ちます。ビタミンCは抗酸化作用があり、体内の活性酸素を減らすことで細胞を守り、炎症を軽減して暑熱順化をサポートします。
タウリンは、栄養ドリンクに含まれており、活力が出るイメージがありますが、有名な滋養強壮や疲労回復の効果のほか、近年では深部体温を下げるということもわかってきていたり、タウリンを摂ることでカラダのさまざまな機能を調節する働きがあることがわかっており、熱中症対策としても意識したい栄養素の一つです。
ビタミンCは、野菜や果物に多く含まれ、タウリンは、牡蠣やタコ、イカなどの魚介類に多く含まれます。どちらもサプリメントや栄養ドリンクも販売されているので、それらを利用して摂取してもよいでしょう。
NG4. 朝食を食べない
谷口さん 熱中症予防のためには、1日3食、規則正しい栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。特に朝食は重要で、朝の水分補給と自律神経の活性化、暑いところに出る体力増進のために必要です。
体内で活動を支えてくれるステロイドホルモンが分泌される時間は、午前10時から11時といわれており、この時間帯に人は最も活動的になります。よって午前10時には朝食で栄養と水分が十分にカラダに補給されている状態が理想的です。
もし朝食が食べられなかった場合は、普段の水分補給に加えて500mLほど追加しましょう。このときは塩分も補う必要があるため、塩分を含むスポーツ飲料などがおすすめです。
NG5. 熱中症を疑う症状が出たときにタンパク質を食べる
谷口さん 体内の水分は、約半分の量が筋肉に貯蔵されるため、筋肉を増加させるタンパク質は、熱中症予防に重要な栄養素です。しかし熱中症を疑う場面で、体温の上昇や、めまい、激しい汗、頭痛などの症状が出たら、タンパク質は避けてください。なぜなら体温をさらに上昇させてしまうからです。
このようなときは水分と電解質をたっぷり摂りましょう。水とナトリウムとカリウムを迅速に適正濃度で摂取できる経口補水液がおすすめです。できるだけ早い時期に多く飲むことで対処できます。ただし、ペットボトルのキャップを自力で開けられないほどになると重症です。迷わず病院を受診してください。
猛暑に備えて、正しい熱中症対策を!
ーー水分や塩分を単独で摂ったり、他の栄養素は意識しなかったり、朝食を食べなかったりなど、ちょっとした行動が積み重なれば、熱中症につながってしまう恐れも。今後は、水分と塩分を同時に意識的に摂る、他の栄養素も意識するなどして地道に熱中症リスクを下げたいですね。
Information
<教えてくれた人>
谷口 英喜(たにぐち・ひでき)さん
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長。2024年5月に新刊『熱中症からいのちを守る』(評言社)が刊行。その他の著書『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社)などがある。
<筆者情報>
椎原茜
ライター。記事を通して、読者の方々に役立つ情報を知ってもらい、ハッピーかつ快適な生活を送っていただきたいという思いで執筆中。
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文・椎原茜